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市民に隠された91億円の負債。知られざる「土地開発公社」の実態

京都市政の真実に迫る…市民に隠された91億円の負債…知られざる「土地開発公社」の実態を暴く

■バブルの負の遺産?失政?―「土地開発公社」とは

土地開発公社という組織をご存知だろうか。土地が値上がり続けた時代、昭和48年、市が必要な公園や道路などの土地を素早く買収する為に設立された京都市の子会社だ。彼らは、京都市から要請があると素早く土地を買収し、それを京都市が買い取るという仕組みになっている。 今、この子会社が解散を巡って大変なことになっている。
バブルが弾けて購入価格を大幅に下回る物件が多数存在するのみならず、財政難によって事業が休止し、京都市の買い取りが遅れに遅れ、塩漬け化し、長年放置されている土地は借金の利息が増え続けることや土地の利用機会損失も含め莫大な損失を生み続けてきた。

市民には知る権利がある

土地開発公社は、市の債務保証の元で設立以来40年の間ひっそりと借金を作り続けていた。
 市民・議会の目が届かない所で、無計画な事業が生み出した損失は91億円にのぼる。それが今、誰も知らないうちに、京都市民の血税で穴埋めがされようとしている。そこで、我々はこれらの実態の公開に踏み切った。

■突如現れた91億円の市民負担!

2012年末、京都市は市の100%出資法人であるこの土地開発公社に関して大きな決断を下した。
全国的に大赤字を垂れ流している土地開発公社は、国でも大きな問題になっていた。土地開発公社の借金は、自治体が保証人になっている為、借金を完済しないと解散できない。そこで国は、全国の開発公社に解散を促す為、一切の資金を自治体に貸付することを決定した。全国の自治体は渡りに船とこの貸付(三セク債という)を受け、続々と解散に踏み切った。
しかし、京都市は貸付を拒否し、解散を15年後に先延ばしするという決断をする。
なぜか。三セク債は10年で完済することが条件になっているが、京都市は10年で処理すると毎年の返済額が大きくなることを嫌い、こうした決断に踏み切ったのだ。
京都市は、借入を行わず独自に買取を続け、15年後に解散するとしているが、その中身はいかにも杜撰だ。買取に必要な187億円のうち大半は平成35年度以降に買い取るとしている。つまり、10年後には財政が良くなるとして無責任に先送りしたのである。
過去の失政が生み出した損失の穴埋めを、今やらずして、いつやるというのだろうか。今すぐやるべき問題を10年先へ先送りする。
こんなことを我々市民は許していいのだろうか。

京都市平成35年まで実質塩漬け

データで見る土地開発公社保有地

■村山祥栄が選ぶ悪質塩漬け土地ワーストランキング

塩漬け年数取得目的取得コスト時価額
1位:北部周辺整備23年間公園整備1億3,700万円1億5,900万円続行不能。時価偽装疑惑。
2位:小山大宅線18年間道路整備1億7,400万円2,000万円続行不能。不法占拠。
3位:改進地区24年間住宅改良3億0,800万円1,700万円地価大幅下落。使い道なし。

■土地価値下落率ワーストランキング

塩漬け年数取得目的取得コスト時価額
1位:改進地区備24年間備住宅改良備3億0,800万円備1,700万円価値下落率。-95%!
2位:崇仁地区備40年間備住宅改良備3億4,000万円備3,600万円価値下落率。-90%!
3位:小山大宅線備18年間備道路整備備1億7,400万円備2,000万円価値下落率。-89%!

・当時の高額取得と地価下落により多額の含み損が発生!

■利息支払ワーストランキング

用地費その他経費利息利息/用地費
1位:大津淀線200万円2,400万円1,400万円700%利息支払額が土地代の7倍!
2位:西野山大宅線4,500万円400万円2億600万円458%利息支払額が土地代の4.5倍!
3位:洛南排水機場3,800万円0円1億5,400万円405%利息支払額が土地代の4倍!

・長年の塩漬けで、支払った利息額は土地の取得原価を大幅に超過!

調査で判明!”塩漬け”保有地の現状

京都市土地開発公社が現在保有している物件は、平成25年7月末日締めで22物件、合計91879㎡、保有額184億円、時価総額73億円だ。勿論、中には一部値上がりをしている土地もあるが、大半の土地は大幅に下落しており、その差額は100億を下らない。
ちなみに、賢明な諸兄は、現在の保有物件ですらこれほど酷いのだから、これまで買い取った土地にも多く問題があるのではとお考えではないだろうか。そこで、ここ5年間の土地開発公社から京都市が買い取った物件も調査したが、幸いこれまでの購入物件は比較的すぐに事業が着工できる物件を優先的に購入してきた為、ほとんど問題は見当たらなかった。(物件自体が事業に使用されている為、いくら値下がりしても問題に仕様がないことも大きいが)
したがって、今残っている物件が、その使い道のなかった物件の残滓だと思って頂いていい。現在の保有地はこちらからご覧頂けるのでとくとご覧いただきたい。

公社の保有地一覧

Case1.事業停止・塩漬けで膨らむ借金・疑惑の時価評価

―左京区大原大見町 北部周辺公園整備計画物件

取得年度塩漬け年数面積簿価額時価額(京都市推計)
平成2年度23年間44317㎡1億3,700万円1億5,900万円

【公園用地として荒れ地を購入も23年間放置】

疑惑の時価評価市内から車で一時間以上、鞍馬や大原からでもゆうに30分は走る。すると目的の公園予定地に到着する。
元々は公園用地として取得された当物件。昭和55年の都市計画により公園を作る予定であったが、平成23年に道路事業「市道大原花脊線」が休止されたことに伴い事業が休止。再開の見通しは立っていない。というよりもはや事業継続不能は間違いない。
 23年間の塩漬けの間に借金は膨らみ、土地取得原価6,000万円に対し支払った利息はなんと5,800万円にも及ぶ。
 さらに、写真の通りの荒地にもかかわらず、京都市は20年前よりも高い時価額で評価している。現地に一緒に赴いた不動産事業者に、「1億どころか1000万でも売れるとは思えない」と酷評。過大評価による一種の赤字隠しが疑われ、今後の調査が必要だ。

Case2.高額買取・事業続行不可能・不法占拠

―山科区四ノ宮奈良野町 小山大宅線市道整備計画物件

取得年度塩漬け年数面積簿価額時価額(京都市推計)
平成7年度18年702㎡1億7,400万円2,000万円

【事業はそもそも実現不可能?!さらに不法占拠で農園に】

不法占拠で農園に平成2年度から山科東部地域と国道1号線を結ぶ幹線道路建設を目的として事業が進行。当物件も事業用地として平成7年度に取得された。
当初、建設局からは道路建設事業中で、これから事業化していくとの説明があった。
 しかし、調査を進めていくと驚くべき実態に直面する。この道路は、国道1号線に接続する計画なのだが、当の接続部分がある滋賀県大津市、滋賀県警は、交通状況を理由に市道との接続を拒否し続け、こう着状態が続いているという実態が浮き彫りになる。以来事業は停止。警察が強く危険性を示唆しているということは、相当な事業計画の変更がない限り事業を進めることは不可能だ。よくもまあ、事業進捗中と言えたものだ。
 さらにこの間、公社の土地は不法占拠され、今では堂々と農業体験農園が営業され、公社は完全に黙認をしている状態なのだ。
 放置されること18年。その間に時価は下落、言うまでもなく、大きな含み損を生んでいる。

Case3.買い取り不適当、多額の含み損が・・・

―伏見区竹田狩賀超他 改進地区住宅改良計画物件

取得年度塩漬け年数面積簿価額時価額(京都市推計)
平成元年 他24年 他267㎡3億800万円1,700万円

【3億円が1700万円に!? 土地価値下落ワースト1位!】

3億円が1700万円に!?  危険住宅対策事業での買い取り用地だが、決して危険家屋を優先的に買い取ってきた事業ではない。かつて旧同和地区では危険住宅対策事業という名で市による土地の買取が長年進められていた。
地元民の間では、土地は市が買い取ってくれるものだという誤った認識がまでも広まっている。土地は狭小、路地裏、事業を行えるような土地ではない。結果、高値で買取り、使い道がない為、最終的には低価格で売却することになる。当然、含み損は大きい。うがった見方をすれば、税金を投入し、不当に地域住民が潤う仕組みだったとも言えなくもない。
さて、本来、土地開発公社は公拡法という法律で購入してよい土地は事業用地やその代替地に限定されており、当物件の様にどちらにも当てはまらない物件の購入は認めていない。その点において不当な購入と言わざるを得ない。いかに、ずさんな買収を進めてきたのかということだ。
 いずれにせよ、市民が穴埋めする以外になす術はない。

下記2013年10月19日UP!!

むすびに

91億円の実損、負担を市民に強いることになった土地開発公社問題。
不法占拠、価格下落、利息支払の拡大、事業継続不能。様々な課題を決算委員会で取り上げた。
その中ではっきり見えてきたことは縦割り行政の弊害だった。
事業の廃止や見直しを訴えたが、

行財政局は「都市計画で決定しているので・・・・」といい、
都市計画局は「あくまで原局が決めることなので・・」といい、
建設局は「都市計画に基づいて」といい、

結局たらいまわし、責任の擦り付け合いが見え隠れした。
都市計画決定の見直ししなければ動けない。
政策判断が遅れることが塩漬けの長期化を生み、さらなる金利、価格下落がムダな税金が使われる。
判断さえ、決断さえ出来れば、この問題は大いに前進する。
事業については次の通り提案をした。

■それぞれの事業計画の再検討

都市計画の見直しも含め早急に使い道を決定させること。

■事業計画(売却も含め)が曖昧なものは買い戻し禁止

事業が明確化、整理できたものから買取を実施せよ。

■損失を市民にしっかり情報公開すること

知らされずに流してはいけない。しっかりとマイナス情報も提示すべき。

次に開発公社解体について

三セク債の締め切りは終わり、もはや三セク債を使った解体は出来ない。しかし、使えないからといってこの問題を終わらせてはならない。何年で解体するからは京都市の自由裁量だからだ。
10年で解体するも、15年で解体するも、これは京都市の胸先三寸である。
平成34年までの買取額が56億円、平成35年度以降の買取が121億円。
10年間は3分の2は買い取らない=事業化しないという結論で本当にいいのだろうか。発生する金利は少なく見ても12億円、金利上昇によってさらに膨らむことは必死だ。
10年後の財政は間違いなく厳しいものであることは明白だ。そんな時代へ問題を先送りすることはもっての外である。そこで、解散に向けては下記の通り申し入れる。

■三セク債利用時同様、10年以内に全て清算し解散すること

本来は即清算すべきだが、現実的に10年以内というのが妥当。

最後に、この責任を一体どういった形で、誰が取るのかと言う点だ。失政によって市民に大変な負担を強いることは確定している。それについて誰もが知らぬ存ぜぬは余りに政治として無責任だ。
市長?当時の責任者?公社?オンブズマンなら当時の責任者(市長)を相手取って損害賠償を請求するだろう。どこかの国の大臣なら辞任をして終結させるだろう。
しかし、我々はそんなものを望んでいない。辞めれば責任を果たせるというのは悪い習慣だ。ましてや行政訴訟をしてささやかな金銭を当事者から取り上げても仕方ない。
我々の役目は、再発防止と問題解決だ。
大切なことは責任を放棄し未来へツケを送ることをやめることだ。
責任は事業の実施主体、京都市、狭域で言えば事業局が取るべきだと思う。
市民の損失は、今、埋めるべきで、市民にご不便をお掛けするのを覚悟の上で、今事業を削って、買い戻しを実施するべきだ。特に事業局は、これから実施する事業の手を止めて、この整理をおこなうべきだ。勿論、市民からご批判を頂くのだが、それを正面から受けてこそ、責任を果たすことでなないだろうか。そこで最後に次の2点を提言し本調査のむすびとしたい。

■各事業局にて発生した損失分は、局内の他の事業を縮小させ責任を負う。

責任逃れに終始せず、担当部局にもしっかりと責任を取るべき。

■損失分については事業を削減し捻出し買取を進めること。

市民に負担を強いるということは不便をお掛けするということ。うやむやにしてはいけない。