※財政の厳しさを伝える市民しんぶん
■名ばかりの財政再建路線、財政破綻へ向け一直線
昨年は京都市による事務方の誤りで、元々財政が危機的状況である中、大型汎用コンピューターのオープン化事業で80億円以上の損失を被る痛恨のミス。コロナ禍で市民税は約5%、宿泊税に至っては60%の減収と収入が大幅に減る中、同市の令和3年度予算が発表された。昨年から門川市長は「来年度予算500億円不足、令和8年には夕張市と同じ財政再生団体に陥る可能性」を示唆し、財政危機を乗り越える為の予算編成に望むと期待をしていたが、実態は「問題の先送りの『先送り』」という非常に残念な発表となった。
まず将来計画についてだが、根本的な部分で「借金を返済するための積立金(公債償還基金)」の恒常的な使い込みが問題になっている。本来御法度であるはずの借金の返済原資を使い込んでしまった結果、原資が枯渇し将来的に返済不能に陥るリスクがどんどん高まっており、これを回避するためには、返済原資の使い込みをやめ、本来積み立てておくべき金額に戻す以外に方法はない。
しかし、京都市は、返済原資の使い込み額を減らすどころか、昨年比62億円増の181億円を取り崩すという禁じ手依存は加速し、財政再建とは名ばかりの、まさに逆行した予算編成となってしまった。さらにいえば、今後の財政見通しでは、これからもずっと返済原資を使い込んで予算編成をするという。若干使い込みを減らし、その分延命するということらしいが、破綻に向かって一直線には変わりがない。
■財政難はコロナのせいはない?
市民しんぶんにはコロナが原因のように書かれているが、事実は全く違う。いざというときに備えず、今を謳歌し、ツケを先送りにし続けた体質が原因だ。
かつて議会で議論した時、「最低限の貯金を使い込むギリギリの財政運営を続け、もし非常事態が起きたらどうするのか」という問い対し副市長は「非常事態になれば国が面倒見てくれる」と啖呵をきっていた。市長、非常事態になったが、国はちゃんと面倒見てくれているか?
答えは否だ。だからこそ市長は根気強く国に支援を要請し続けているのだろう。この楽観的な思考回路と先送りが今日の問題を招いたのだ。コロナ禍で、京都市は市民が望む行政運営をできているとは言い難いが、お金があれば出来たことは多い。出来ない状況を自ら招き、その問題に気づいたにも関わらず改善しようとしないのは実に由々しきことだ。
ついでに言っておく。この状況になってなお、京都市は問題を先送りし、さらにカツカツの予算を組んでいる。仮にコロナがさらに拡大したり、天災が京都を襲ってももはや京都市は自力で対処する力を残していない。そういう予算編成をしたということをご認識頂きたい。
ちなみに、2月7日現在、非常事態宣言延長に伴う飲食店に支給される協力金の一部負担(国80%、府13%、市7%)すら財源が
確保されていない。
それだけではない。返済原資の使い込みでは事足りず、通常の借り入れとは別に、行革推進債と調整債というまともな自治体ならまず手を出さない借金にも手を出し、あわせて236億円というツケを先送りし、それでもなお予算がないとコロナ対策は全く市民ニーズに対応できていない。
京都市の令和3年予算概要
一般会計 1兆5億600万円
うち予算不足額 236億円
行政改革推進債 32億円
調整債 23億円
公債償還基金取り崩し181億円
京都府コロナ関連予算2041億円
中小企業預託金 1555億円
感染患者受入病床支援358億円
宿泊料施設整備・運営 56億円
検査体制確保 8億円
金融・経営一体型支援 3億円
ひとり親家庭生活支援 2億円
非正規雇用女性就労支援 3億円
京都市コロナ関連予算2456億円
中小企業預託金 2300億円
ワクチン接種の実施 82億円
PCR検査・保健所強化 48億円
住宅確保給付金 6億円
学校の感染症対策 7億円
児童一人端末への対応 7億円
よく見ればその差は歴然!
■コロナ対策予算の虚構
「京都市はカネがないからコロナ対策ちゃんとやってくれていない」という市民から怨嗟の声が漏れ聞こえるが、京都市側はコロナ対策予算2456億円も捻出したと胸を張る。
そんなに予算化していればもう少し手厚い対策ができるのでは?とお思いになると思うが、実はここにもカラクリがある。まず2456億円のうち、2300億円は普段から拠出している中小企業向けの融資預託金(実際には使われない保証金のようなもの)で、それを差し引きすると、実際はたった146億円しかない。この146億円の中には、起業支援や観光誘致事業も含まれており実質的なコロナ支援と呼べるものはさらに少ない。ちなみに、府市の違いがあるので同じように比較はできないが、府のコロナ対策予算は2041億円と京都市より小さく見えるが、うち中小企業預託金1555億円で、500億円近くが純粋なコロナ対策が計上されている(感染患者受け入れ病床確保358億円、宿泊療養施設整備56億円など)。京都党がコロナ禍の経済的支援が手薄な点を当局に確認したところ、驚くべきことに「経済的支援は国がしっかりやっているので、市として
やる必要性はない」と回答した。他都市はせっせと緊急支援を打ち出しているが、京都市ははなからやる意思がないことは残念な限りだ。
■肝心の財政再建はというと・・・
動物園のサル舎新設工事、烏丸線可動式ホーム柵の設置、無電柱化事業、鴨川東岸線改修工事、横大路公園多目的グラウンド整備などの一部大型公共事業の先送り、イベントの中止・縮小等は一定削減対象とされたものの、「聖域なき改革に着手する」と豪語した割には思い切った対策がされていない。一部の事業で見直しがされた一方、新規事業は60事業132億円が計上されており(前年度は176事業206億円なので縮小したのはしたのだが)、その中にはプラスティック削減事業やICTを活用した地域コミュニティー支援事業、生物多様性保全推進事業など、いずれも必要性は理解できるものの、他に優先すべきものがあるのでは?と感じる新規項目も散見される。
特に全国トップレベルを誇る雨水幹線整備に47億円を計上していることは違和感を感じる。(雨水整備率は全国平均60%、京都市91%で、緊急性が高いとは言えない)極めつけは、市長悲願の芸大移転整備には11億円の満額予算を計上、2月議会では196億円に上る工事契約議案を提出している。
■「職員の給与カットもやる」と胸を張るが…
少し踏み込んだと評価したい、改革の目玉としての「聖域なき給与カット」だが、こちらも減額はたったの14億円、0.85%に留まる(人件費総額1600億円)。一律2.5~6%のカットという表現がされているが、6%は幹部職員だけで、大半が2.5%のカット、もちろん本給のカットだけで、手当どころかボーナスも今まで通りとなり、結果的に全体の1%未満の削減でお茶を濁した格好だ。
出来れば、給与カットを避けたいというのはよくわかる。しかし、京都市は全国屈指の財政破綻まっしぐら自治体だ。にも関わらず、全国公務員給与ランキング(出典・東洋経済)は全国1718自治体の中で42位と最高レベルの給与が保障されていることに違和感を覚えないのは私だけではなかろう。
■健全化団体転落必至の交通局
さて、コロナ禍にあって、その影響を最も受けているのが交通局だ。緊急事態宣言の発令や観光客の激減で乗客数が前年比、地下鉄で26%減、市バス25%減と直撃弾を喰らって市バス56億円、地下鉄58億円の赤字を見込む予算編成となった。
ただ、電鉄をはじめとする民間の交通機関各社も同様の収入減による巨額の赤字が計上されており、ある程度はやむを得ない。私自身、これまでの交通局の経営改革は一定評価しており、京都市の中では最も改革は進んでいる。ただ、2008年に全国の地下鉄で初めて「経営健全化団体」指定され、その後2017年に脱却出来たとはいえ、経営基盤がまだまだ脆弱で、コロナの様な突発的な事態に対応できるだけの体力がついていなかったことが大きい。
一方、バス事業はここ数年黒字転換し、少し調子に乗っていた感は否めない。収支を無視した路線拡張、新車の大量購入、バス路線の民間委託先の撤退に伴う職員の大量採用など、忠告を無視した積極的な投資を進めてきたツケがまわってきている。そもそも、バス事業が黒字化している本当の理由は、敬老乗車証と市役所職員の業務用の乗車券費用が一般会計から支払われていることにある。
私はいずれ削減対象になる可能性が高い為、これらの支払いが無くなっても黒字化できるだけの体力を作るべきと申し上げてきた。それができていれば今年の赤字は回避できていた可能性がある。
■財政再建
現在、予算審議が行われている最中だが、私の心配している点は以下の三つだ。
一つ目はコロナの状況が予断を許さない中、突発的な事態に対応できず、国が地方にお金を配るまで市民に即時対応ができなくなること。
二つ目は予算不足で市民に提供すべきコロナ対策が全国最低レベルに陥ってしまったこと。
三つ目は財政破綻一直線、予算不足が解消されるめどはたたず、京都市のサービスはさらに低下し続けるということだ。それでもなおサービスを維持すれば、破綻へのスピードがさらに加速する。財政再生団体になると、予算編成の主導権は総務省に移り、京都市が独自で行っている施策は全てストップしなければならず、まさに市民生活に大混乱をもたらす。
もはや、京都市に楽観的な再建シナリオはない。今やるべきは、限られた予算をコロナ対策に思い切って振り分け、あとは徹底した財政再建に着手し、出来る限り無理なくソフトランディングさせる道を探ることだ。同時に、市民にその事実をしっかり公表すべきだということを申し上げておきたい。