「大型汎用コンピュータのオープン化事業で80億円の損失見込み」、「来年度予算に向けて不足額が500億円」、「交通事業でも80億円の赤字見通し」「税制改正、当局の準備不足で決着せず、異例の継続審議」などの報道でも見られるように、今、京都市は、未曾有の混乱の中にあります。最新の京都市議会を村山目線でまとめました。
決算は黒字だが、そのしわ寄せはコロナ禍支援へ。
令和元年度の京都市の決算発表で、4億円の黒字という報告がされています。コロナ禍前の決算だったこともあり、何とかやりくり出来たいのかといえば大間違いで、実態は無理やりお金を絞り出して作り上げた虚像なのです。
黒字化した最大の原因は単なる錬金術です。ひとつめは財政調整基金と呼ばれる貯金を全額(39億円)取崩し、それでもなお不足する財源を、「特別の財源対策」と呼ばれる禁じ手で84億円補っています。つまり、差引で119億円の赤字というのが実態です。
ちなみに、京都市がコロナ禍で「お金がない」といって機動的な支援策を打てなかったのは、「有事」のために貯めておかないといけない財政調整基金が、この年度に全額取り崩して枯渇していたことが一番の原因です。
決算議会を見ていても、令和二年9月~10月だったこともあり、コロナ禍前の平時の決算ですが、どうもコロナ禍でうやむやにしているように感じます。
私は、かねてからこうした有事リスクに対処する為に足腰の強い財務をつくるべきと主張していましたが、哀しいぐらい言う通りになってしまったというのが現実です。
金ない上に、失策で失う86億円
京都市では、コロナ禍の減収も相まって、来年には500億円の予算不足に陥り、次年度の予算編成が出来ない状況を迎えている。(11月1日現在)
そんな中飛び出したのが、800億円にのぼる大型汎用コンピュータの損失問題だ。町内のデジタル化を進めるために取り組んでいたこの事業は、もともといわくつきと言われていた事業だ。てんでばらばらのシステムを運用していた京都市がシステムを統合し、新しいシステムを導入しようとした事業だが、当初から京都市が考えるシステムが余りに現実離れし、専門家の間では「不可能では?」という疑問視する声が多い中、京都市は強行して入札を実施。結局、最初にそのシステム開発を受託した事業者はシステムを完成させることが出来ず裁判沙汰に発展しています。その後も、京都市が考える委託内容の実現が困難で仕切り直しの必要性を議会では指摘をしていたにも関わらず、肝心の委託内容を見直さなかったことにより結局オープン化システムが実現せず一時中断の事態となってしまいました。最終的に行政の失策で86億円の損害が発生する事態となったのです。
このタイミングで損害賠償免責条例?!
これは偶然か必然か、真相は不明だが、このタイミングで京都市は住民訴訟に敗訴して市長や職員に損害賠償を求める場合に上限を設ける新たな条例を提案している。かつて西京区のポンポン山住民訴訟で当時の市長が敗訴し、26億円の支払いが発生しており、結局市長が逝去され未回収に終わっている案件などもあり、個人の支払える上限を超えた損害賠償については上限を設ける条例が制定できるようになった。これにより市長は年収の6倍を上限に対応する。これ自体は各自治体で現在順次制定されているもので問題ないのだが、先述の損失の議論の直後だけに「誤解を呼ぶ」といかぶる声もある(10月27日京都新聞)。
市長選での主張が、現実になった京都市財政
そんな中、今議会最大の混乱の原因は、500億円もの巨額の財政不足の件です。コロナ禍がなくても着実に近づいていた財政破綻が、コロナ禍で一気に現実的なものとなりました。遂に、「財政は大丈夫!縮み志向になってはいけない」と豪語していた門川市長も「このままだと数年で財政再生団体になる」と発言するに至りました。財政再生団体になると、予算編成の主導権は総務省に移り、京都市が独自で行っている施策は全てストップしなければならず、まさに市民生活に大混乱をもたらします。
私が長く率いた京都党は、結党以来10年間、まさにこのようにならない様に、市民サービスを多少削ってでも歳入の範囲内での歳出に抑えるべきと、提言・提案・指摘・苦言と正にあらゆる手段で行ってきました。『村山=財政規律派の急先鋒』というレッテルを貼られながら。後に余裕がなくなればハードランディングにならざるを得ず、少しでも早くから取組み、市民生活への影響を小さくするためです。
今回の審議対象であった令和元年決算では、コロナ禍の影響前の通常運転の中で多額の財源不足を計上し、その後のコロナ禍への対策で使えるはずだった財源を枯渇させるに至っています。
現在進行中の令和2年度決算では、コロナ禍の影響前の予算時点で193億円の財源不足からスタートし、コロナ禍の影響で更に80億円の財源不足が加わります。
これから予算を組む令和3年度予算では、既に財源不足500億円の見込みとなっています。
ここに至って、ようやく財政の立て直しに本腰をあげた門川市長。遅すぎます。まさにゆでガエル状態だったのでしょう。
財政権の道はあるのか?
まず、令和3年度予算の財源不足500億円のうち、コロナ禍による臨時的・一時的な財源不足150億円と慢性的な財源不足は350億円、わけて対応すべきです。
臨時的・一時的な財源不足は、大型工事の一時凍結や職員給与の時限的なカット、市有財産の売却などをもって手当てすべきで、市民サービスへの影響がないように対応することで対応することが可能です。
慢性的な財源不足は、人件費で言えば職員給与表の見直しや残業の削減などをもって減らす、大型工事においては工事の簡素化や中止などをもって対応、その他、全ての事業のコストパフォーマンスや事業のそもそもの必要性の見直しによる大幅な削減や民間資金の活用による対応することで、多少の痛みを伴いますが、根本的な解決を図ることが出来るはずです。門川市長も聖域なき財政改革と言っていますが、早速、300億円近く掛かる芸大移転だけは他の事業と別枠で進めることを決めるなどその覚悟のほどがわかりません。
最後に
いずれにせよ、来年度予算は大変厳しいものになると思われます。特に京都市の仕事をお引き受けされている企業にとっては大幅な受注減になることが予想されますのでご注意されることをお勧めします。既に京都市では市バス料金の値上げや減便の検討、公共事業の縮小、市民サービスの見直しと市民生活にしわ寄せが出る財源確保策が模索されているように、一部サービスの低下や負担増といったしわ寄せが発生することは十二分に考えらえます。これまで放置したツケを払わされる日がやってくる気がしてなりません。今できることは、出来る限り市民生活に影響hが出ないよう、ソフトランディングに努めることであり、引き続き尽力をしてまいる所存です。